爪水虫は書いて字の如く爪の水虫で、正式名称は「爪白癬・つめはくせん」と言われていて、爪が白癬菌(はくせんきん)に感染したもの。
ミョウバンって言うのは、聞きなれない言葉と思う人も多いかもしれないけど、一般的に消臭や殺菌に効果があると言われていて、市販品として多く購入されている白い粉状の物質。
今回は、このミョウバンが爪水虫の治療にどこまで効果があるかを整理してみるとしよう。
先ずミョウバンについて簡単に紹介すると。
ミョウバンは硫化塩って言われる物質とカリウムやアルミニウム、鉄などの金属とからできている硫化化合物で、一般には鉄ミョウバン、カリミョウバンとか言われているんだ。
硫化塩なんてとても恐ろしそうな名前で、やばそうなもんじゃないかってイメージしちゃうけど、ラーメンの「かん水」とかウニや煮物なんかに添加物として使用されているもので、少量摂取しても健康に影響のないものとされているから大丈夫だよ。
温泉地域などでは自然界に存在するけど、スーパーなどでは合成されたミョウバンが多く売られていて、簡単に、しかも安価に入手できるんだ。
ミョウバンは通常、水に溶かして水溶液として使用し、水溶液は弱酸性となる。
一方、人間は皮膚から汗をかき、皮膚にいる雑菌がその汗を分解して臭いのもとを作っているんだけど、その雑菌はアルカリ環境を好むものが多い。
だから酸性物質であるミョウバンは、その雑菌の繁殖を防止したり、殺菌したりする効果があるってのが理屈ってことで、水虫の白癬菌ってのも酸が弱点なんだ。
またミョウバンには金属の消臭効果もあり、酸化還元反応によって臭いそのものを消す効果も確認されていて、コストパフォーマンスのよい化粧水とかデオドランド剤として多く使われているんだ。
次に水虫だよ。
水虫とは皮膚糸状菌っていうカビ菌で、そのなかでも白癬菌という菌が皮膚に繁殖して炎症や水膨れなどを起こす立派な皮膚病。
結構多くの人が水虫にかかった経験をもっていると思うから症状には馴染みがあると思うけど、水虫っていう名前はこの白癬菌が繁殖する場所が違うと別名になる。
例えば、体に感染すれば「タムシ」という病名になし、頭に感染すると「シラクモ」、股間に感染すると「インキンタムシ」何て感じでね。
水虫は結構手強い相手だってことはみんな知ってるよね。
なぜなら、水虫は皮膚に繁殖するものだから白血球による駆除も不可能という事実と、皮膚の新陳代謝のスピード以上の速さで繁殖していくから自然治癒が期待できないってのが理由なんだ。
コツコツと薬を塗って治療しないと治らないってことかな。
更に、皮膚の内部まで温床として根付く菌なので、外観的な症状が改善して痒みも無くなったとしても、菌が死滅したとは限らず、密かに皮膚のどこかに潜んでいる可能性が十分あるんだ。
だから薬は患部だけでなく周辺全体の範囲にコツコツ塗る必要があるし、病状が改善しても菌が完全に死滅するまではしっかり薬を塗り続ける必要が有る。
白癬菌は基本カビだから、ジメジメした夏場に活発になる傾向があるけど、夏になって症状が再発した経験をした人は多いと思うのでわかるよね。
昔は成人男性、特にサラリーマンのように年中革靴を履いている人が発症しやすいとか言われてたけど、最近は女の人でも水虫で悩んでいる人が多い。
指先の狭いヒール履くと指間の隙間がなくなって結構水虫になり易いとかあるからね。
水虫には感染の進行状況に応じたステージってのがあって、徐々に繁殖が進むと最後はとんでもないことになるんだ。
初期は趾間型水虫(しかんがた)と言われ、皮膚がボロボロ剥がれたり、白くなってふやけたり、ひび割れたりするもの。
次のステージは、小水疱型水虫(しょうすいほうがた)と言われ、足の裏に小さな水膨れが多数できる症状で、まあ良くある水虫の症状かな。
ちょっと脱線するけど、水膨れは体の免疫効果で水虫と戦い炎症を起こした結果で、この透明の液体に触れると感染するってことは余りないんだよ。痒みを発症するのは炎症が原因なんだ。
その次のステージは、角質型水虫(かくしつがた)と言われ、水虫を放っておくと発展し、皮膚表面の角質層が厚く硬くなり、足の裏の皮膚がガチガチに厚くなったり、ひび割れを起こす症状や、白い線が出来たりするのが特徴。
この時には、皮膚が乾燥している状態が多いので、てっきり治ったと思ってしまう人も多いんだ。
でも、水虫は確実に繁殖を繰り返して最終ステージへの進行を進めている。
そして最後が爪水虫(つめみずむし)で、爪が白く濁ったように変色したり、爪表面に筋がでたり、変形したりする末期症状。
たちが悪く、このステージでは、殆ど痒みがないので気付いた時にはひどい状態に成り得る、まあ末期ガンみたいなもの。
爪水虫の怖いところは、靴が履けなくなって歩くことさえ困難になることで、歩けなくなると生活に支障が出るばかりでなく、内臓機能の低下も招く可能性も大きいんだ。
爪がないと力がはいらないって想像できるでしょ。馬でも歩けなくなると生きて行けないから殺しちゃうって聞くもんね。
更に糖尿病との合併症の危険があったり、痛みがないので自分では気づかないうちにボロボロと白癬菌をばらまいて感染させるっていうことも起きる。
家族もたまったものじゃない。
とまあ、ミョウバンは弱酸性の化粧水とかデオドランド系水溶液で、爪水虫は末期ガンみたいなものってことがわかったところで、次はミョウバンに爪水虫の治療効果があるかってことを考えるとしよう。
水虫の温床である皮膚とは
ミョウバンの効果を考えるのには皮膚の構造について少し整理が必要かと思う。
皮膚っていうのは体の表面全体を覆っているもので、その表面は角質層とか皮脂層と呼ばれる0.02mm程度の薄いバリヤ層で保護されている。
よく、潤い肌とか、脂肌とか、カサカサ肌など表現されるのは、このバリヤ層の状態で決まっている。
バリヤ層ってのは簡単にいうと、皮脂と水が乳化した状態のもので、要は脂の中に水が細かく分散した状態でマヨネーズって言えばイメージし易いかな。
通常の状態は脂が多く、脂の中に水が分散している状態だけど、汗をかいたりすると水が多くなり、水の中に脂が分散している状態に変化したりする。
乾燥肌の人や脂肌の人のように個人差もあるし、皮膚の部分部分で傾向が異なったりもする。
このバリヤ層は弱酸性で、人間の皮膚のpHは4.5〜6程度と言うことなんだけど、脂性の人はpHが4.5と酸性側、乾燥肌の人ほどpHが6とアルカリ性側に傾いていて、一般的に男は脂性が多くpH値が低く、女の人はその逆でpH値が高い傾向にあるんだ。
さっき書いたけど、pHが8程度の弱アルカリ性になると皮膚病の原因とされているアクネ菌などが繁殖し易い環境と言われていので極力この状態は避けたほうが良いってことになる。
このpH値は石鹸で皮膚を洗うことでも変化し、石鹸やシャンプーは弱酸性とか言ってるけど実際はpH10前後のアルカリ性なので皮膚はアルカリ側に振られることになる。
通常健康な皮膚はアルカリを中和する力があるから、時間と共にもとの弱酸性に戻るんだけど、水仕事が多い人や、ニキビなんかでマメに洗顔している人なんかはアルカリから酸性側へ戻る力が弱くなってしまうんだ。
これはアルカリ中和能力と言うらしいけど、風呂上りに早めにお肌のお手入れをするってのはこの辺の事情が絡んでいる。
クリームとか化粧水とか塗ってpH6〜8の領域を短時間で回避して弱酸性側へ戻したほうが良いからね。
でもこれはバリヤ層と言う表面的な話をしているのであって、皮膚そのものが何かを吸収するってことは無いんだよ。
皮膚は外部刺激が侵入しないように防御する構造をしているんだ。
よく肌に栄養とか有効成分の浸透とかいう宣伝を耳にするけど、それはごく表面的なことであって、皮膚内部に浸透するってことは無いんだよ。
ミョウバンの爪水虫治療効果
ミョウバン、水虫、皮膚がだいたいわかったところで、爪水虫に対するミョウバンの効果を整理することにしよう。
でも、整理するまでもなく薄々結論が判っちゃってるね。
まず、人間の皮膚はpH4〜6程度で、ミョウバン水はpH4〜4.5なので、ミョウバンは正常な皮膚のpHに一致している。
だからミョウバンは皮膚を正常なpH環境に戻す手伝いをするし、細菌繁殖など防止する効果はあると言える。
つまり、石鹸で体を清潔に洗浄した後、アルカリ側へ傾いた皮膚を正常な弱酸性側のpHに戻すようにミョウバンで手入れしたりする行為は医学的及び経済的に非常に有効な手段ということになる。
また、消臭などの効果も期待できるので、ミョウバンはコストパフォーマンスに優れた庶民の味方的存在ということだ。
一方、爪水虫となると水虫の末期的症状なので病状は深刻で、爪と皮膚の内部奥底まで感染している状態。
まずpH的な観点から整理すると、通常の水虫と言われるものでも、pH4程度の皮膚に繁殖し続けることができるので、ミョウバン水を塗布しても殺菌はできず、白癬菌はへっちゃらで繁殖することができるという残念な結論になってしまう。
だから末期症状と言える爪水虫どころではなく、通常の水虫だってミョウバンの治癒効果は怪しいってことになる。
仮に、ミョウバン水の濃度を目一杯あげたとして精々pH4より低く状態にしたとしても、白癬菌が死滅するかってのは微妙なところなんだよ。
次に皮膚の構造からの観点で整理すると、皮膚は外部刺激を防御する構造をもっているため、ミョウバン水を塗布したからってそれが奥底まで浸透することは絶対にないんだ。
ましてや爪水虫の治療となると、爪の内部や爪と皮膚も界面に浸透が必要となるため、皮膚構造観点からも残念ながらミョウバン水では治癒効果は期待できないってことになる。
ましてや医者から処方される薬ですら浸透治療という意味では非常に困難な治療と言わざる得ない。
通常足などにできる水虫は露出しているから、軽度な水虫は高濃度のミョウバンにコツコツ根気よく浸かるとかすれば回復する可能性がないとは言わないけど、白癬菌が皮膚の内部へ繁殖したら手遅れだっていうことだ。
よって、結論は「爪水虫にかかったらミョウバンなんて効果は期待できない」と言わざる得ないことになる。
水虫は一般的な皮膚病で、昔から人々を悩ませてきたもので、簡単に治癒できる方法があれば、とっくに実践され広まっているはずだよね。
実際に、民間療法の報告っていろいろあって中にはとんでもないことを試している人は多いんだ。
例えば、酸に弱いっていう観点から酢とか漂白剤(塩素系薬品)に浸かるってことを試した人。
熱に弱いっってことで、大きなロウソクに火を灯して熱々のロウを幹部に垂らして治そうとした人。
ニンニクとオリーブオイルを塗りたくって治そうとした人。
いずれもその効果が明白にあったとは報告されていないんだ。
そんなことしたら水虫退治以前に皮膚がやられてしまって大変なことになるんだけどね。
でもそれぐらい皮膚がやられようが、火傷しようが水虫よりはマシって思いなんだろうね。
正気の沙汰とは思えない行動に出るということは、それ以上に苦しんでいるってことなんだと思うけど、そんなことまでして水虫治すぐらいなら、末期症状になる前にミョウバンつかってしっかり清潔にするのが賢いよね。
ミョウバンは水虫治療には効果は期待できないけど、日頃の肌の管理をするものとしてはコストパフォーマンス抜群で役立つものだと思うよ。
まとめ
・ミョウバンは、皮膚のpHとおなじ弱酸性で皮膚のケアに効果が有る
・水虫は白癬菌というカビ菌が繁殖する皮膚病で幾つかの病床ステージをもつ
・爪水虫は水虫の末期ガン的ステージ
・ミョウバンは水虫予防に効果はあるが、治癒に対しての効果は期待できない